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4.1.2 波浪応答
艇が波浪中を前進するとき、波との出会いによってピッチング運動を起こす。低速では波のプロフィルの変化により艇の浮力分布が変化することによってピッチングを起こすが、速力が上昇するにつれて、波に対する相対姿勢と前進速力による動的揚力分布の変化が加わり、これはFn=0.3あたりから特に顕著になる。半滑走状態に入ると、船尾と水面との相対位置の変化がおさえられて(ヒービングの影響が加わり)、船首と水面との相対変位が大きくなる。F▽=4を超えて滑走状態に入ると、艇の運動はヒービングの成分が強くなり、波の変化と艇の運動との位相差によっては船首の衝撃より船尾の衝撃の方が大きい場合が出てくる。さらに高速になってF▽=6を超えると、ごく普通に波頂から飛び出してジャンプする機会が多くなる。
半滑走あるいはそれ以上の速力で進んで来た艇が独立波、例えば船の曳き波、ダイバージング波に出会ったとき、水平な姿勢で進んで来た慣性力があるので、水平に近い姿勢で波に突込む。第1波を突切りながらピッチング運動を始め、第2波あるいは第3波でピッチッグは最大になる。この場合、船首が細く尖った船型で船首フリーボードが小さいと、船首が第1波に突き刺さる形となる。船型と突込む角度によっては船首は深く水中に突入し、危険を感ずることもあるし、船首が太く、しかもフレーアが小さい船型だと、船首チャイン上の外板が波に激突する形となり、外板損傷を起こす場合もある。
船にはピッチングの固有周期があり、波との出会週期が固有周期と一致すると同調して発達したピッチングを生じ、スラミングを発生する。スラミングとは、通常は滑らかに変化している船体のピッチング運動が、水面衝撃によって不連続な運動となる現象で、水によって上向きの槌打ちを受けるものと理解してよい。
一般の船舶が規則波と出会うとき、波との出会周期Teが、船の固有ピッチング周期TPより大きいときには、船は出会い周期で強制ピッチングを行い、出会周期の方が小さいときには船の慣性力が大きいので固有周期でピッチングをする。また、不規則波中では固有周期でピッチングをしている場合が多いと考えられている。
半滑走状態で平水を航行中の艇では、見掛けのGMLが大きくなることは横のGMの場合と同様であり、また、ピッチングにより船体の大部分が空中にある問は水による付加質量が小さく、慣性力が小さくなる。したがって、高速時のピッチング周期は短くなると考えられるが、波により大きなピッチングをするときの周期は低速時と余り変わらない。半滑走以上の速力で波の中を航行すれば動的揚力分布の波による変化が大きいので、短い出会周期の波にも応答して、比較的短い波によっても強制ピッチングをするし、長い波長を主成分とする不規則波中では固有周期に近い出会い周期の成分に応答して、あたかも自由ピッチングのような応答を示す。
半滑走以上の速力においては、彼への応答は船型によってその様相に差が出る。船型の相違によって航走安定特性に大きな差があり、それが波浪応答に差を生じ、波の中でもきわめて安定した航走をする艇がある一方、ピッチ・ロール・ヨー等の達成したきわめて不規則な運動をして、時には制御困難になる船もある。

 

 

 

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